2014-06-24

「これが悪魔とはねえ。もう少し堂々としたものかと思っていたのに」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
十三日の金曜日に、ある夫婦は鏡の中から悪魔をつかまえた。
その悪魔は名前に似つかわしくなく、なんとも哀れでパッとしないものだった。
それから夫婦はその悪魔をとじこめて…

***

虐待の描写が恐ろしいんですが、どこか童話めいた恐ろしさです。
対象が悪魔のせいかな?
童話ってけっこう残酷ですよね。

悪魔を捕まえる下りがすごくワクワクします。
この方法で悪魔が捕まえられるかどうか…ちょっと試してみたいかも。

しかし、キューキュー泣く悪魔は哀れですが、泣き声がちょっと可愛い。



デラックスな金庫

「金庫にだけは、さわらないでくれ」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
全財産をつぎ込んで、豪華な大金庫を作った男。
ある夜、その金庫をねらった強盗がおしかけてきて…

***

星小説には、ほんとに驚くようなビジネスアイディアが満載です。

このお話は、「ボッコちゃん」と「悪魔のいる天国」の両方に収録されています。



冬の蝶

「雪って、降る時に音をたてるのね。こわい」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
テクノロジーが進歩した未来の住宅。妻と夫はパーティーの準備中だった。
だが突然、全ての装置が動かなくなり…

***

ライフラインが突然途切れたら。
現代の便利な生活への警鐘ですね。

そしてモンは他の生き残りのサル達とともに帝国を築き、サルの惑星が誕生する…かどうかはわかりませんが。


ねらわれた星

「こんどは、あの星の連中をやっつけて楽しもうぜ」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
他惑星の生物を殺戮して楽しむ、残虐な宇宙人たち。
こんどのターゲットはどうやら地球人…?

***

シンプルですごく笑えます。



年賀の客

「きみは、生まれかわりということを信じるかね」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
実業家の老人の家へ、新年の挨拶に来た青年。
そこで老人から聞かされた過去の話とは…

***

星先生の話はだいたい考えなくても楽しめるんですが、この話はちょっと考えてしまった。


※ちょっとネタバレしすぎてます↓


なんで孫の異変から青年に融資をしようと思ったのだろう…
青年が来たから孫に変化が??
と考えてみたけど、そんなに複雑じゃなく、ただ単に、老人の罪滅ぼしのつもりだったんだ、という解釈に落ちつきました。過去の人物が生まれ変わってきたのかもしれない、という恐怖心からの。
なので読者に「この青年が生まれ変わりか?」と思わせるためで、青年は別に関係ないのでしょうね。



悲しむべきこと

「あなたはサンタクロースなのですか、泥棒なのですか。どっちなのです」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
クリスマスの夜にエヌ氏の家へやってきたサンタクロース。
プレゼントをくれるのかと思いきや、拳銃を向けて金を要求してきて…!?

***

サンタさんがまさかそんな苦労をしていたとは。泣けてきます。
そしてその状況をビジネスに利用してしまうエヌ氏、敏腕。

ここで初めて気がついたんですが、星先生は「こと」を必ずひらがなで書いてるようです(不確定ですが)。なにかこだわりがあるのでしょうか。

そしてボッコちゃんの中で「エヌ氏」は何度目の登場だ?あとでかぞえてみよっと。
もちろん、すべて別人ですよ。



2014-06-23

生活維持省

「ああ、死神……」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
政府の方針のおかげで、犯罪も交通事故も病気もなくなり、国民の生活が豊かになった平和な時代。
そこにある1つの必要悪、「生活維持省」の仕事とは…

***

たまったものじゃない。




不眠症

「社長。わたしをやとってくれませんか」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
不眠症で苦しむケイ氏。だけど不思議な事に、少しも疲れない。
考えた末に、会社の夜警として雇ってもらう事に…!?

***

これは眠ったままのほうがよかった…かな。



猫と鼠

「猫だって、追いつめられた鼠にかまれますからね」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
過去の殺人の目撃者にゆすられ、毎月二十五日に金を巻き上げられる男。
がまんの限界でとった行動とは…

***

男の口調が変わると、それまでの形勢が変わっていくところが面白い。
これはきっと、永遠に芋づる式なんだろうな。



約束

「われわれは空のむこうの、遠い遠い星から来たんだよ」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
春の日の午後、子供達の前に現れたのは3人の知的な宇宙人。
子供達が彼らの仕事を手伝ってあげると、宇宙人はお礼に何が欲しいか聞いてきて…

***

宇宙人もがっかりな変わりっぷり。



暑さ

「ちょうど一年前の、こんな暑い日。わたしは殺したんです……」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
夏の日の午後、交番におとなしそうな若い男が訪ねてきた。
その男は、自分を逮捕してくれないかと言ってきて…

***

最後のやり取りで一気に寒気が。
珠玉のサスペンスホラーです。



ツキ計画

「この研究所では、キツネツキからヒントを得た理論の実験をしているのです」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
私は、宇宙進出のための一環をなすツキ計画の取材に訪れた。
そこで目にしたのは、ネコツキになった美女や、さらには…

***

最後。
それ飲んじゃだめだよーーーー!!と思わず叫びたくなる。
これだからキツネは…笑



包囲

「なぜ、おれを殺したいんだ」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
ある夕暮れ時の駅のホームで、私は誰かに背中をおされた。
間一髪助かった私は、犯人と思しき男を追って問いただすが…

***

これは犯人側が言ってる事が本当なのか、
それとも実際犯人じゃなくて、疑われて困ったから適当な事を言っているのか。
それによって見方が変わります。



月の光

言葉など人間にはいらない。言葉がどれほど愛情を薄めているだろうか。


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
広い部屋。プールサイドでペットはしなやかなからだを横たえ眠る。
彼のペットとは…


***

ノーコメント。



変な薬

「喜んで下さい。やっと、すごい薬ができました。これですよ」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
友人が家を訪ねると、ケイ氏は新しくカゼの薬を発明したという。
だけど普通のカゼの薬ではなく…?

***

夢のような薬です。これで学校や会社をサボりまくれる!
でもやっぱり、そう上手くはいかないのでした。



来訪者

「もしや、地球に対する侵略の前ぶれでは…」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
青空の中から突然現れ、原っぱに着陸した円盤。
すぐに去ったかと思うと、跡には金色のスマートな服を身につけた人物が残されていた。
人々は、あの手この手でこの宇宙人と交流しようと試みるが…

***

これは恥ずかしい!
一生懸命やってただけに尚更恥ずかしい!
お願い、笑わないであげて!!



殺し屋ですのよ

「きっと、お支払い下さいますわ。あたしの手腕を、ごらんになれば」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
ある朝エヌ氏が林を散歩していると、木陰から若い女があらわれた。
女は自分を殺し屋だと名乗る。
だが目的はエヌ氏の殺害ではなく…

***

かなり好きなお話です。
この手があったか!と唸ってしまった。
実際はとてもできませんけどね…笑



おーい でてこーい

「おい、この穴は、いったいなんだい」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
台風のあと、村はずれの小さな社の跡に現れた、謎の穴。
人々は深さの知れないこの穴の処遇に困っていたが、ある一人の利権屋がこの穴を欲しいと申し出て…

***

これがカルマというやつなのだろうか。
最後のその後を思うと恐ろしい。

ちなみにこの話の冒頭を、松本大洋さんが漫画にされています。
新潮文庫「不思議な夢」の巻末に収録。

2014-06-22

ボッコちゃん

「名前は」「ボッコちゃん」「としは」「まだ若いのよ」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
バーのマスターが道楽で作った美女ロボット・ボッコちゃん。
誰もロボットとは気付かず、お客の間で大人気に。
そしてボッコちゃんに入れこんでしまった若者は…

***

ボッコちゃんの淡々とした受け答えからとんだ殺人劇に。
しかしプラスチック管から回収したお酒…薬入りじゃなくてもちょっと飲みたくない。


悪魔

「信じたくない人は、信じないでいればいい。だが、わたしは、ちゃんとここにいる。」


掲載:「ボッコちゃん」(新潮文庫)
初版:昭和46年5月25日

あらすじ:
厚く氷の張った北の国の湖。エヌ氏が休暇で釣りをしていると、古いつぼを釣り上げた。
中から出てきたのは悪魔だった!

***

自選短編集ボッコちゃんの一番始めのお話。
星新一らしいシニカルで滑稽な世界が短いお話の中に凝縮されています。
悪魔はいろんな作品に度々登場しますが、この悪魔は非常に悪魔らしい悪魔の分類にはいりそう。


悪魔だとわかっててもお願いしちゃうのは人の性なのでしょうか。
おいおいその辺にしとけよエヌ氏!と思った所で最後はやっぱり...